
沖縄の食と言えば欠かせないのが「肉」です。家庭料理はもちろん正月のような晴れの食事には絶対欠かせないはずなのですが、神の島と言われる久高島の正月料理には肉がないらしいのです。それってホントでしょうか?
基本の沖縄の正月料理
沖縄の正月料理に「おせち料理」はありません。しかもお雑煮を食べる風習もありません。でもお正月料理に欠かすことができない料理はあります。それが「豚肉料理」です。
沖縄の食文化は中国の影響が強いといわれていますが、沖縄特有の亜熱帯気候も関係しているといわれています。
確かに豚肉を食べる文化は中国の影響が強いのですが、気温と湿度が高い沖縄では基本の調理法だけでは食材が傷んでしまいます。また食材も本土とは異なる食材が多いですので、食材に合わせた調理法も必要になります。
そのため沖縄は、中国の食文化を取り入れつつ沖縄独自の食文化へと発展したといわれています。
そんな沖縄の正月料理の基本は「重箱料理」です。沖縄では重箱料理のことを「うさんみ(御三昧)」と呼び、おかずのお重(うさんみ)と餅のお重(むちじゅう)がセットになっているのが基本です。
おかずの種類は7種類または9種類(家庭によって品数が異なる)で、紅白かまぼこ(品数が多い場合はカステラかまぼこが追加)、皮つきの豚の三枚肉、揚げ豆腐(品数が多い場合は沖縄てんぷらが追加)、昆布、ごぼう、こんにゃく、田芋が入ります。
またお雑煮の代わりに出される汁椀は「中身汁」「いなむどぅち」がふるまわれます。
中身汁は豚の内臓を使った汁椀で、琉球王朝時代には宮廷料理でもありました。またいなむどぅちにも豚の赤身肉が使われているため、豚肉料理の一種です。
このように沖縄の正月料理には必ず豚肉が登場しますので、豚肉を使わないお正月料理自体が基本的に考えられないのです。
久高島の正月料理その①【蒸した芋】
久高島のお正月は、豊作を願う祈願から始まります。この時にお供えするのが蒸した芋。
実は芋は昔の沖縄の主食で、撮れた芋を蒸して食べるのが一般的でした。そのことから主食である芋を神様にお供えし、それをみんなで一緒に食べて豊作を祈願します。
久高島の正月料理その②【刺身】

正月2日目には、大漁と漁の安全を祈願する儀式があります。久高島では「男は漁師、女は神女」ということわざがある通り、男性は漁に出て生計を立て、女性は神女として神様に仕えるのがしきたりでした。
そんな久高島では、毎年正月2日目には船を出して神様へお願いをします。この時に船に持ち込むのが刺身。もちろん神様への祈願が終わると、お供えした刺身はお下がりとしてみんなで食べます。
久高島の正月料理には肉が出ない?
久高島の正月料理には、ここまで見てきた内容からすると一度も肉が出てきません。これは久高島に伝わる神様の儀式と関係しているのだといいます。
久高島では、一年の健康を祈り神様から杯をいただく「シャクウガミ」という大事な儀式があります。
もちろん神様から直接杯をいただくわけですから、身を清めてその時に挑む必要があります。ところが四つ足の生き物を食べることは、この島では穢れをつけるということになるのだとか…。
しかもシャクウガミは正月の3日目に行われるので、それまでは穢れを避けるために肉を食べなかったのだそうです。
最近ではこうしたしきたりも徐々に薄れているようですが、シャクウガミが行われる家では今でもこのしきたりを守り続けているといいます。
今も旧暦で正月を続ける久高島のお正月は奥が深い
古くはどの家庭でも旧暦でお正月をお祝いしていた沖縄ですが、今ではほとんど見かけなくなりました。
それでも今なお旧暦で神様と共にお正月を迎える久高島は、正月料理もまた伝統的な風習にのっとって準備されていました。
そんな久高島のお正月は、料理だけでなく過ごし方もまだまだ知られていない魅力でいっぱいです。
だからこそ久高島は今なお沖縄の人々の信仰の対象となっているのかもしれませんね。